バットマンの映画がすばらしすぎる。

バットマンの新作映画「ダークナイト」見てきました。
ハリウッド映画としては驚愕のテーマを含みつつもエンターティメントと両立させた手法はお見事。映画としては90点(これはすごい高得点のつもり)で、まぁ難癖つけるとしたらトゥーフェイスの章が駆け足過ぎで消化不良(ここも掘り下げれば美味しいのに!)、ジョーカー説明詳し過ぎっ(バットマンにしゃべってるというよりも映画の観客に語りかけてるような。まぁコレも判ってやってるのだろうけど)、てなぐらいかな。
ちなみに先週TVでバットマンビギンズみたけど雰囲気以外は凡作ではないかと。西洋人が見たらオー!ミステリアスオリエンタリズムーとかいって喜びそうなアレですな。ひょっとしたらTVの編集がエグかったのやも。
で鑑賞後、バットマン=アメリカとすぐに連想してしまう。いろいろごたごたしたけれど、やっぱり戦い続けるバットマンの選択に、自己憐憫ナルシステックな妄想を重なり合わせてヒロイックな気分に浸ってしまうが、そこは是非是非考え直してもらいたい。この映画は理解されることはなかろうが世界中に嫌われようがガンガン行くぜ!てなことを正当化もしてもいないし啓蒙している訳でももちろんない。もちろん悪の枢軸=ジョーカーなんて断定するのは安易な逃げ道すぎる考え方である。
舞台のゴッサムシティの外は一切描かれない。で、この閉じた世界を地球の縮図と考え、その登場人物一人一人のあり方を丹念に観察し感情移入て欲しい。主要人物からフェリーの一般市民と罪人(俺は今どっちのフェリーに乗ってるんだろうか)にも、通りすがりの人々も。
ネタバレしちゃうとイヤンなので感想はこの辺で終了。
で、この閉じた世界と地球との唯一の違いは、現実にはジョーカーなんて一個人は存在しない(すげぇラッキー)のだが、たしかにジョーカーは存在する(えっ!なんで?)ことがたいそう問題な訳で。
バットマンとジョーカーの表と裏(光と闇でも善と悪でもなく)も面白い。
バットマンがジョーカーを殺しても次のジョーカー的な何か出現する事(落下するジョーカーを釣り上げたシーンはこの隠喩なのだろうか?)はバットマンも承知済みなのに、バットマンをやめない彼も矛盾しているって、大層胃が痛くなるが、彼も同じく狂っていると思わせるジョーカーの指摘もこのロジック内では反論できない。
ちなみにバットマン=アメリカと冒頭で断定してますが、これは私が西側諸国の一員であることが起因しているだけのこと。いやなことに、どこに住んでてもバットマンに思いを馳せることができ、またジョーカー(の影)を見出せてしまう。しかしこのジョーカーって名前は秀逸だなぁ。
今でも回想する度にいろんな考えが頭をもたげてしまうが、この映画はべつに思わせぶりなだけで質問を投げっぱなしにしている訳ではない。取り扱っているテーマが重く、また正面からがっぷり四つに組み合っているから考えさせられる事このうえない。しかも映画として面白い。
ぜひとも映画館に足を運んで欲しい。
べつに普通に見てもちょう面白い映画(大画面で見るって意味で)ですぜ。
20080818追記
別にバットマンはアメリカでもいいです。判りやすいしね。で、バットマンやほとんどの登場人物はジョーカーにこてんぱんにしてやられます。しかしそのジョーカーに一矢報いたのはフェリーに乗った「普通の人達」。
指輪物語でも中つ国を救ったのは灰色のガンダルフじゃなく、ましては白くなったのでもなく、強大な指輪の力ももちろん違う。居心地のいい穴で暮らしていた「只のホビット」であることを思い出して欲しい。
たしかに今の世の中無力感たっぷり大盛りなのは確かなんだけど、とりあえず選挙ぐらいは行っとこう。どこに入れたかなんて関係ない。投票率の高さこそが重要なポイントではなだろうか。
でね、トゥーフェイス死んじゃうじゃない。バットマンの中の人は彼の意志を継ぐだけの器量があるにも関わらず、バットマンをしちゃうわけ。やっぱオカシイわな、彼。