ポン・デ・ライオンと仮想家族

 本日はネクタイ装着のサラリーマン装備。なぜならパソコン修理で出張だったりするからだったり。で、帰り道はミスタードーナッツに寄り道し、ポン・デ・ライオンを捕獲するという大きな野望があった。
 時は遡ること2週間前の木曜日。女子社員にミスドのホームページにて、ポン・デ・ライオンの無駄の無いフォルムの醸し出すラブリー感やら円らな瞳が繰り出すかまって光線などの魅力をポワポワと教わった。んで、この危険な獣の所有欲が沸沸と沸き上がり、その日にミスドに買いに行って来た訳ですが、そこには無情にもこんな注意書きが存在した。
「12歳以上のお客さまはご遠慮下さい」
 ちなみに同日、女子社員は平然とポンデライオンを入手したそうだ。身長以外は12歳以下に到底見えないルックスなので、コレだったら行ける!と確信した私は、その機会を虎視眈々と狙っていたのである。


 んでから2週間、しっぽがクルクル回る、「ポキュ」って可愛く鳴く、ポンデリングは取り外し可能でもってライオンちゃんがおなかへったら食べるんよ、といった自慢話やら裏話を聞かされ続け悔しい思いをしつつも、しっかりと情報収集に励んだ結果、娘(や甥っ子)のお土産なんですよ、てな言い訳すれば確実に購入できるのでは?との結論を勝手に導き出し、いざミスドの門を潜る緊張感。
 本日の私の格好は背広ネクタイ装着なんで、「ポン・デ・ライオンをお土産に待つ姉妹のお父さん」な設定・脚本を脳味噌にローディングしつつ順番を、待つ、待つ、待つ。
で、順番が回って来たので間髪いれずに即座に質問。
「お、おもちゃセットってまだありますか?」
最初の「お」が若干上ずった感が無きにしも有らずだが、先制攻撃をかける。うっかり店員が「ありますよ」などと言ってしまったらペースは此方が握ったも同然。ポンデライオンちゃんの首根っこは掴んだようなものだ。回答が「12歳以下のうんぬん」なら苦難の交渉が待っているだろう。もし無いって言われたら、それはそれで諦めてドーナッツ買って帰るだけだ。
「ありますよー」
私の先走った戦闘思考を知る由も無い店員はさらっと即答した。先制攻撃は成功。後は店員の思い出したかのような「大人は駄目っ!」攻撃をかわす事が出来れば、ポンちゃんは晴れて私のペットだ。
「えーとおもちゃセットで、人形と水鉄砲の2個ずつの合計4セットお願いします」
さぁ来い店員よ!この不審な購入個数に疑問を呈して見よ!
想定回答はこうだ!

~妄想モード・オン~

 我が家には5歳になる双子の姉妹がいて、同じおもちゃじゃないと喧嘩しちゃうので(これは所有欲から来る争いではなく、おそろいじゃ無きゃ嫌といった仲良し故の理由です)仕方が無く同じおもちゃセットを2個ずつ買わなければいけないのです。
店員:それなら、人形か水鉄砲どちらかで良いのでは?
あー全然分かっておられないなぁ。子煩悩な私が、娘達ばかり構っていると嫁(家庭的でおっとり系)がやきもちを焼くのですよ。そこでお土産としてドーナッツを家族の人数分買って帰る必要が出て来るのです。
 晩飯後のテーブルに並ぶ4個ずつのドーナツとドリンク、横ではおもちゃで遊ぶ娘達。大人だからおもちゃセットは駄目といった杓子定規な解釈でこの楽しい一家団欒の光景を崩壊させるというのですか、貴方は!

~妄想モード・オフ~

以上の内容を目で語りかけながら注文するも、店員はあっけなくドリンクとドーナッツの種類を聞いて来るのであった。嬉しいのだがどこか寂しい。そんな気持ちが判って貰えるだろうか。ちょっとは私の妄想に付き合ってくれよ。
 会計をすまし、目的のポン・デ・ライオンと小麦粉の塊を手にした私が、急いで店を出ようとすると「ポイントカードありますよ~」と店員さんの声が、数歩巻き戻し、ポイントカードを受け取った瞬間、店員はすべてお見通しだったのでは?と感じ、赤面した顔を下に向けつつ店をそそくさと後にしたのであった。
 そんな苦労の甲斐あって入手したポン・デ・ライオンは、きっと私の心情を察してか、「何も知らないモキュ」といった表情で微笑み続けているのであった。
 ちなみに私、独身です。当然、子供もいません。